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03.29
Thu
 最近漠然と思ったことを漠然と書いてみる。
 以前「羽生結弦選手の演技に勝手に「ゴシック性」を見てしまう」という記事を書いた。ゴシック建築は垂直に上を目指す線が特徴であるように、ゴシックは高みを目指す超越的、陶酔的な激情を誘うと云うが、羽生くんの演技もひたすらに高みを目指していて、超越的、陶酔的な激情を感じさせるところがある、といったような話。
 しかしもちろん羽生くんの演技に感じられるものはゴシック性だけではないわけで、それだけでは説明しきれない不思議な魅力があると思う。それは「もののあはれ」なのではないかとあるときふっと思ったのだった。
 フィギュアスケートは西洋発祥のもので、そういう意味では西洋のものである「ゴシック」が感じられても不思議ではない。しかしそういう西洋発祥のものを、ある意味とても日本人らしい日本人である羽生くんが演じることで、そこに西洋と東洋の交錯が生まれる。それが羽生くんの演技の複雑で不思議な魅力につながっていると思う。そしてその東洋的な要素の中核をなすものは「もののあはれ」ではないかと何となく思ったのである。
 とはいえ「もののあはれ」とは何なのか、私だってきちんと説明できるほどわかっているわけではない。Weblio古語辞書によると「平安時代の文芸の美的理念の一つ。自然・人生に触れて起こるしみじみした内省的で繊細な情趣。(以下略)」らしい。とにかく、自然の移ろいや人生の機微などの何かに接して、いわく云いがたい感情が起こる、そういったことを指すのであろう。私が羽生くんの演技を観て、ゴシック的な陶酔的激情といったものを感じると同時に、繊細で、言葉にしがたい、あえかなものをも感じているのは確かで、それは「もののあはれ」と表現しても差し支えないのではないかと思うのである。
 羽生くん自身が「もののあはれ」ということをどのくらい意識しているか、理解しているかはわからない。でもその感性の豊かさから、羽生くんの心の中には実質「もののあはれ」と呼べるような感覚があるのではないかと思う。それが演技ににじみ出て、観る側の心にも「もののあはれ」をもよおさせているのではないだろうか。
 ゴシックの特徴が垂直に高みを目指す線ならば、もののあはれはどちらかというと水平方向にゆらゆらと漂っているイメージである。ゴシックが「みずから高みを目指す」という能動性ならば、もののあはれは「何かに接して感じる」という受動性である。この両方があることで、羽生くんの演技は多面的で不思議な魅力をまとうのではないだろうか。
 もちろん、プログラムによって、この二つの割合、それぞれがどんなあらわれ方をするのかは違う。今のところ「もののあはれ」性が最もよく漂っていた演技は、ヘルシンキ世界選手権のHope & Legacyではないかと思っている。

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 余談だが、最近、ハーバリウムというものをいただいた。プリザーブドフラワーやドライフラワーをオイルに漬けて長持ちさせるようにした装飾品らしい。私が詩歌をやっていて『硝子離宮』という(羽生くんネタを含む)五行歌集を出したことは以前記事に書いたが、五行歌仲間の方がその『硝子離宮』をイメージして作ってくださったとのことなのである。
 嬉しいことに、メインに使われているのは青い薔薇なのである。
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IMG_5437.jpg
 「羽生結弦くんと青い薔薇」という記事を最近書いたが、羽生くんによく似合う青い薔薇、そういうイメージが私の作品にもあったのだとしたら、そこでちょっと羽生くんとつながれたようで、なんだか嬉しいのであった。


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03.25
Sun
 地上波放送分をざっくりと観たのみ。
 ええと、私はなぜか勝手に宇野くんは怪我しそうもないイメージを持っていた……が、やっぱり怪我ってあるんだな、と。で、その怪我を抱えた状態でよく頑張ったと思う。特にフリー後半にコンビネーションを三本きっちり入れたのは凄かった。銀メダルおめでとう。それにしても男子フリー最終グループは大自爆大会でびっくりした。その中でなんとか踏みとどまったのが宇野くんという印象。コリヤダくんもショートがよかった分三位でなんとかとどまった感じ。ただ、チェンくんだけが自爆なしで突き抜けたな、と。圧倒的な勝利だった。技術点もすごいが演技構成点も上がってきたなあ。
 そして友野くん!シニアデビュー年で代役という立場ながら自己ベストを大幅に更新する溌剌とした演技、すばらしかった。総合5位、フリーだけだと3位で、日本男子三枠獲得もおかげでできたし本当によかった。田中くんは……うーん、もうちょっとピシッと決める力が欲しいよなあ、と思ってしまうが大きくて華のある演技は今後歳を重ねるとますます味が出るかもと期待しよう。
 あと、私はやっぱりジー選手の演技が好きだ。それから、今回の世界選手権に限らず、ベテランのビシェンコ選手は今季何かとわりと印象に残っている。

 しかしなんだかんだ云ってもそれでも羽生くんは世界ランク一位を維持しているし、トータルスコアの上位三位までをまだ羽生くんが占めている。チェンくんがフリーで高難度を含む四回転を六本入れても、羽生くんが4回転はTとSのみで構成したスコアに及ばないということは、羽生くんの演技全体の質がいかに高いかをあらためて浮かびあがらせる形になったのではないかと思う。

 女子についてもちょっと。新葉ちゃん銀メダル知子ちゃん銅メダルのダブル表彰台おめでとう。新葉ちゃんはショートのミスからよく切り替えてフリーは素晴らしかった。知子ちゃん若干ミスはあったけれどやはり底堅いという感じ。優勝したオズモンド選手もここのところ前よりも手堅さが加わった印象がある。それにしてもザギトワちゃんがあそこまで崩れるとは。やはり金メダル後の世界選手権というのは調整などいろいろ難しいのだろうな。ベテランのコストナー選手も今回クリーンな演技とはいかなかったけれどさすがの存在感である。あと、ロシア女子はザギトワ、メドベージェワ両選手が話題になりがちだけれど私はソツコワちゃんの演技もわりと好きである。

 いろいろなことがあった今季。それぞれの選手が今季から得たそれぞれの糧を抱えて来季へ向かってゆく。大幅なルール改正もあるらしいし、どうなることか楽しみに見守りたい。


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03.21
Wed
 『夢を生きる』(中央公論新社)の内容は大部分がアイスジュエルズからのインタヴューをまとめたものであるが、10章は新しいインタヴューである。そして羽生くん自身が書いた文章と思われるあとがきがついている。
 この10章とあとがきについて、私はいまだにどう感想をまとめたらいいのかわからない。羽生結弦という人が置かれてきた立場、その孤独、その人生の軌跡、そういったものを思って深くため息をつくしかない気分である。
 ソチ五輪後は特に孤独だったらしい。私は「人間にとって孤独というものは前提」だと思っている人間で、谷川俊太郎さんもそう云っているらしいが、しかし羽生くんの孤独はそういう一般論で語られる孤独よりも何かやはり特殊なものがある気がした。何せ、金メダリストということも含めて、羽生くんの置かれた立場、してきた経験というのは、他に似通った状態にある人というのがまずほとんど考えられないものだ。「こんな気持ちは誰にもわからない」という思いがすごくあったという。それも無理もないことだと思う。誰も「羽生結弦という立場」の人は他にいないのだもの。私だってファンとして、応援してるし、羽生くんの気持ちに寄り添えればという気持ちは持っているけれども、どんなに想像力をたくましくしても、羽生くんという人が実際に抱えている本当の気持ちを「わかる」なんて云えない。
 それに、本人も云っていたけれど、羽生くんの人生は振り幅がものすごく大きい。素晴らしい体験もしてきたけれど、つらいこともあった。「スケートをもう辞めよう」と思ったことも何度もあったという。羽生くんがどっしりとしてものに動じないタイプならともかく、人一倍豊かで繊細な感受性を抱えてそれらの経験を乗り越えてきたかと思うと、本当にもう何も云えなくなる。
 それでも、羽生くんは、そういう経験をしてきて、そして前を向いている。「今はもう一人で何とかしようとは思わない」というから、適切に周りの人を頼ることを覚えたのだろう。一番身近にいるお母様をはじめとして、支えてくれる、応援してくれる人のありがたさにあらためて感謝し、いろいろな経験をしてきた過去の自分に対しても胸を張れるように、と。
 そんな羽生くんの経験、羽生くんの思いが、二連覇の金メダルという実を結んでよかったと思う。もし仮に二連覇の金メダルを取れていなくても、羽生くんはその経験から豊かな糧を取りだす力を持っていると思うけれども、でもやっぱり、二連覇の金メダルを取れて本当によかった。
 二連覇の金メダルということで羽生くんの立場はますます特殊になり、ということは一方では孤独も深まるのかもしれない。けれど羽生くんがどれほどの孤独を抱えていても、一方では羽生くんはたくさんの愛、支えに囲まれている。それが直接羽生くんの孤独をほどくことはないとしても、たくさんの愛が支えがあるということ、それを羽生くんはこれからも忘れずにいると思う。これから先も、振り幅の大きい人生を歩むのかもしれなくても、きっと前に向ける力をその都度手に入れてゆけると思う。羽生くんが「幸せ」を感じられる時ができるだけたくさんあるといいな。


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03.17
Sat
 無良くんというと、男らしい色気のある演技、そしてなんといっても3Aの豪快さが印象的だ。五輪に一度も出られなかったのは残念だった。四大陸優勝とかGPシリーズでの優勝とか元来実力はしっかりあったと思うのだけれど。私としては、ソチ五輪の代表がどうなるか、というような時期「髙橋、織田、小塚、町田、無良、羽生(敬称略)」が六強だな、日本に六枠あってもいいのにな、などと思っていた。その六強のうち現役を続けているのはこれで羽生くんだけになってしまった。
 今季のショート「ファルーカ」の特にステップ部分が好きだった。「オペラ座の怪人(二季とも)」「Shogun」も印象に残っている。
 羽生くんが無良くんのアドバイスを受けて4Sが跳べたりして「無良くんと一緒に練習したい」って云っていたエピソードを思い出す。無良くん、後輩たちにとって優しい兄貴分というイメージ。

 現役生活お疲れさまでした。これからの道に幸がありますように。

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 Continues with Wingsとか仙台パレードの情報は当然気にしている。気にはしているがどちらも行けるかというと無理。でもそうやって現地には行けないファンも凱旋を祝う気持ちを持っているということを羽生くんはわかってくれていると思うのでいいのだ。


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03.13
Tue
 完全に時期を逸したが、やはりこれには一応触れておきたくて。
 AERAを入手した(増刊号の方も買った)私は『青い花』については以前記事で述べたけれども、その花が薔薇かどうかはその時点で確信が持てなかったのだった。ただ、後のテレビ番組で撮影風景がスクープされて、ああ、やっぱり薔薇だったんだ、と。
 青い薔薇。英語でblue roseというと「ありえない物事、できない相談」の喩えであることは以前から知っていた。近年青い薔薇が開発されたという話もあるけれど、その薔薇もいわゆる真っ青な青じゃない。「青い薔薇」という言葉で直感的にイメージされるような薔薇はいまだ生花では存在していないと云っていいだろう。実際撮影された蜷川実花さんも「此の世のものでない」感じを出したくて青い薔薇と組み合わせたというし。その狙いはばっちりはまっていたと思う。青い薔薇という非現実感と、これほどみごとにマッチしてしまうというのはさすがである。羽生くん自身が人間として「ありうる」「ありえない」のぎりぎりのキワを行くような存在だからだろう。そしてそこに漂う、どこか背徳的でありながら品のある不思議な色香。
 羽生くんは目での表現をいろいろ考えていたというけれど、何はともあれ、一面の青い薔薇という背景に負けず、しっかりと存在感を示し、しかも見る側を惹き込む力を発揮する、それはやはり羽生くんが「見られる存在」としての自分を磨き上げてきたということの証明でもあると思う。芸能人が人に見られることによって綺麗になってくる、あかぬけてくるというような話を聞いたことがあるが、目立ちたがりでフィギュアスケートという見られる要素の強いスポーツを選んで、しかもそのトップを張ってきた羽生くんは、芸能人並かそれ以上に見られる存在としての己を強烈に意識してきたことであろう。その「見られ力」とでもいうべきものはもちろんなんといってもフィギュアスケートの演技場面のために磨かれてきたものだろうが、そうでない場所でもこれだけの威力を発揮できるものになっていたのか、と私はあらためてため息をつくのであった。
 青い薔薇だけでなく、鏡を組み合わせた印象的な写真もある。蜷川実花さんはそれについては特に(公には)言及していないと思うが、鏡という演出には羽生くんのナルシシズムを際立たせる狙いもあったのではないだろうか。自分の「見られ力」をしっかりと磨き上げた者だけが持つ極上のナルシシズム。揶揄的に投げかけられる言葉としての「ナルシシズム」などははるかに凌駕した領域の。
 上記にリンクした以前の記事でも触れたように蜷川さんの『蜷川妄想劇場』という写真集(そういえば表紙は青い薔薇)を持っている私としては、蜷川さんにまた別の演出での羽生くんも撮ってみて欲しいなあと思うのだった。

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 羽生くんの靴のチャリティオークション、いろいろ波乱はあったけれど最終的には社内で有志を募ったサマンサタバサが落札したとのことでよかったと思う。


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03.11
Sun
 羽生くんが七年前のこの日アイスリンク仙台で地震に遭遇したこと、その後、期間は短いとはいえ避難所生活を経験したことなどを思う。もちろん羽生くん以外にも多くの人たちが被災したことを思う。
 復旧復興が進んでいるところ、進んでいないところ、いろいろあって、でも「全く元どおり」なんていうところはないわけで、それでもみんなそれぞれの状況を受け入れて、あるいは受け入れられないながらも、なんとかやっていっている、そのことを思う。被災地から遠く離れたところにいる私などが想像しても追いつかないところが多々あることは承知しつつ。
 どうか今もなお助けが必要な方々に、必要な助けが行き渡りますように。

 東北に行きたいなと思う。2014年に仕事がらみで仙台に行くことはできたが、思うようにいろいろなところを回れたわけではなかったし。けれど今の私の諸状況を考えると、ちょっと東北に足を運ぶのは難しい。でもいつかきっと、と思っておく。

 羽生くんの金メダル二連覇が励ましになったという方もあることだろう。金メダル二連覇だけでなく、羽生くんの姿は誰かに、何かのきっかけをもたらす力をいつも持っていると思う。そういう力を持っている存在であることを眩しく思う。そういう存在であることを謙虚に、でもしっかりと引き受けている羽生くんのけなげさを思う。


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03.07
Wed
 五輪の試合が終わってからの本人の発言などでなんとなく予想がついたことではあったが。ほっとした。しっかりと治療とリハビリに専念してくれたならそれが一番。アイスショーの予定があるとしてしばらく先だけれどそれも無理せずにいてくれたなら。治療中やリハビリ中はいろいろとしんどいこともあるかもしれないけれど、羽生くんならきっと乗り越えられる。そしていい状態で「4A」や「パーフェクトパッケージ」に挑んでくれたなら。
 羽生くんが心おきなく大好きなスケートができる日が、できるだけ速やかに来ますように。「羽生結弦の演技」を再び観る日を心待ちにしている。

 それにしても友野くんの代打登場率の高さよ。ここはラッキーチャンスと捉えて思い切りのびのびと滑ってくれれば。宇野くんは安定して実力が出せるのであまり心配していない。田中くんは五輪でも大きくて華のある演技が出来ていたと思うので、あとは四回転の精度を上げてできるだけ上位に食い込んでくれたらいいな。

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 チャリティーオークションの羽生くんの靴、えらいことになってるな……。いったい最終落札価格はどうなるのやら。


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03.05
Mon
 印を結ぶポーズから始まって、最初のあたりの動作は、これから戦うための「気」を練り上げているようにも見えた。4S、そして4T、いずれも見事な出来栄えで決まって、序盤の山は乗り越えたとひとまずほっとする。3F(ソチでは痛恨のミスがあった3Fだ)は何度見てもいきなり跳ぶように見えてびっくりする。助走レスな羽生くんのジャンプたちのなかでも、演技への溶け込み具合がこの3Fは際立っているのではないか。スピンでビールマンが入らなかったので腰の調子が悪いのかちょっと心配になる(けれどエキシでは入っていたのでちょっとほっとする)。丁寧にきざむステップ、最後のあたりはジャッジを魔力で誘うかのよう。曲が静かで流れるようなパートに入って4S3Tが綺麗に決まってまたほっとする。が、次の4Tの着氷が乱れて3連続ジャンプに出来ず。しかし次の3Aをすかさず三連続に変えてくるあたり、演技中の構成組み替え得意の羽生くんらしさ全開だな、と思う。久しぶりの3Lo、そしていよいよ最後の3Lz……いつもみんなをはらはらさせる3Lz、着地危ない!と思ったが本当にぎりぎり転ばず手もつかず耐えた。よかった。そして力をぐっとためているようなイメージのスピンからその力を解き放つコレオへ。このプログラムのコレオはとりわけコレオらしいコレオだなあと思う。音楽的にもパンパンと両手を開くところから始まって、陰陽師メインテーマに乗せて、と区切りがわかりやすいのもあるが、羽生くんの強みはハイドロブレ-ディングとレイバックイナバウアーという特徴的な技を盛り込めることだなあとつくづく思う。そして力強いスピンですべての力を練り上げ、そして最後に両手を広げて地を踏みしめることですべてを凜と鎮めるイメージ。
 そして歓喜の爆発。「勝った」と叫んでいたらしい姿。そして右足をいたわり、氷に手をつく姿も印象的だった。
 私もこれでほぼほぼ金メダルはとれたかな、と思った。もちろん後にフェルナンデスくんと宇野くんが残っていたけれど、これを超えるのは容易ではあるまい、と。そして実際に後の二人も羽生くんのスコアを超えることはなかった。フェルナンデスくんには4Sの抜けがあり、宇野くんには4Loの転倒があったけれど、これらがもしなかったとしても羽生くんはおそらく逃げ切ったのではあるまいか。もちろん、二人とも、それぞれに質の高い演技ではあったけれども。
 あと、もちろんフリーで一位になったチェンくんの演技にも圧倒された。ショートで出遅れがあったからこそのふっきれた部分もあったのかもしれないが、あそこまで四回転で攻めてくるというのはやはり凄い。ジンくんも転倒はあったけれど一生懸命な演技でよかった。あと、ジャンプはまとめきれなかったもののチャン氏にはやはりスケーティングそのものの雄大感がある。そして私のお気に入りのジー選手とリッポン選手もやっぱりそれぞれに素敵だった。

 多分、他のときの羽生くんならば、フリーで一位になれなかったこと、技術点で若手に負けていることをもっと露骨に悔しがったのではないかと思う。けれど、怪我を負って、スケートそのものが続けられるかどうかさえ危ぶんだような時期を経て「できるだけのことはやって、そして勝った」という達成感が今回はより強かったのかもしれない。それに演技構成点は全体のトップだし、着氷がうまくゆかなかった二つのジャンプ以外のGOEがほとんど2と3しかないのはやはりさすがの羽生結弦クオリティである。


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03.03
Sat
 ようやく録画の整理がある程度まで進んだので。
 羽生くんのショートプログラムを何度か観返したが「珠玉の演技」とはこういうのを言うのだろうなとつくづく思う。ANAのCMじゃないけれど、不純物を取り除いた至純の演技。ピアノのみの旋律とあいまって、その純粋さが際立つ感じ。
 みごとな4Sからのイーグルの流れの美しさ、キャメルスピンの手の繊細な表情(だからキャメルスピンを天井カメラアングルにするなってば!)、シットスピンの透明な火花が散るような雰囲気、GOE満点のトリプルアクセルの切れ味、音楽の盛り上がりに乗せての4T3T、セカンド3Tの両手上げの華麗な感じ、そしてプログラム全体としてもそうなのだが特にステップ部分は羽生くんの身体が音楽そのものになったかのよう。そこからほとばしる清冽な色気。最後のスピンだけレベルをとりこぼしているけれど素人目にはそんなことはわからずただうっとり。
 羽生くんの演技の特徴はシャープさとやわらかさの不思議な同居だと思っているのだけれど、このバラード第一番はそれを特に強く感じられる演技になっていると思う。

 にしても、この演技が結局最終グループの見事な漬け物石になったなあ、と。特にチェンくんとコリヤダくんが漬かりすぎて可哀想だった。その二人がずっかり漬かったせいか、その後三人はそれほど漬からなかったけれど、にしても羽生くんの点数を誰も超えられなかったわけで。宇野くんは3Aだけちょっとあぶなかったけれどあとはまとめて、表現の方でも見せてきたと思う。フェルナンデスくんはジャンプが全部綺麗に決まったのもよかったけれど、独特のやわらかい表現力がやっぱり素敵。ジンくんもジャンプも決まったし、演技も小粋に切れよくまとめていてよかったと思う。どうでもいいような話だが、この最終グループ、羽生くん以外は全員衣装がモノトーンだったな。
 最終グループ以外では、やはり私はジー選手とリッポン選手の演技が印象に残った。リッポン選手を五輪で観られたということも嬉しい。

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 羽生くんに国民栄誉賞が検討されている件については、そういう話は多分出そうな気はしていた。で、羽生くんがそれにふさわしくないとはもちろん全く思わないけれど、私個人としてはあまり積極的にあげたくはない感じ。なんだかカタクルシイ気もして。ただ、羽生くん自身がそれを受け取りたければ受け取ればいいと思う。受け取ることで金メダリストの肩書きにさらに箔が付くことで、将来羽生くんがしたいことがしやすくなるとかいうこともあるだろうし。でも、肩書きがかえって重荷になるようであれば辞退するというのもありだと思う。まあなかなか辞退はしにくいだろうけれど。


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