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04.29
Sat
 もう約一週間経ってしまったのか……。
 で、現地に行けただけチケットの競争率的にはすごく恵まれているのはわかっているし、私個人のスケジュール的にもなんとか行けてよかった、という意味ではすごく幸せだし、審判側のスタンド三列目というのはこれまた決して悪くないポジションだというのはわかっている。わかっているが一つだけ云わせてほしい。
 審判席の後ろ、ちょっと高いところに立っている黒服の映像カメラマン三人が邪魔でしょうがなかった!いや、大事なお仕事をなさっているのはわかってるんだけれど。
 三人が黒い服を着て、当然のことだが選手に向けてカメラを動かすので、まるで三人でダンスをしているかのように動きがシンクロするのだ。そっちの方を観るとそれがどうしても目に入ってしまって気になってしょうがない。私は彼らを勝手に黒い三連星と名づけた(ファーストガンダムにかつてどっぷりはまった人)。そしてまた、ちょうど彼らの向こう側に当たる位置でのジャンプが多いのだ。これが見づらいことこの上ない。キスクラと各国の応援席もその方向。ちゃんと双眼鏡持って行って、ある程度キスクラとか見たのは見たけれど、黒い三連星のおかげで見づらいったらありゃしない。
 そういうわけで、羽生くんの美4Loも美4S3Tも、私の好きなタケノコ2Tつき3Aも黒い三連星の彼方であった(と思う)。
kunibetsu.jpg

 さてあらためて当日を振り返る。ちなみにいまだに放送された映像は観られてない。このGWに観て、ハードディスクを整理せねば。
 会場に向かう前に、あらかじめ夕ご飯を近くのコンビニで調達して持ち込もうと思ったら、やはり同じことを考える人は多くいると見えて、おにぎりなどの棚はほとんど空っぽだった。何とか調達できたけれど。あとそのコンビニで、バッグから国旗類がはみ出ている人なんか見かけたりして。
 さて会場に着いて。ペアショートプログラムとアイスダンスフリーも観たんだけれど、もはや記憶はかなり朦朧。楽しんでたのは確かだけれど。特にアイスダンスは、今のように私の興味関心が男子シングルに集中する前は、観る競技としては四種目で一番好きかもと思っていた時期もあったりしたこともあり、素敵だなあと思って観たはずなんだけれど。村元&リード組すごくがんばってたよかったなと思ってスタオベした記憶はあるんだけれど。それから、ワン&リウ組もいい感じだなあと思って観つつも、リウくんについて「羽生くんを姫だっこした人だよなあ」というのが頭の中をぐるぐる。
 アイスダンスフリーの後に、持ち込んだ夕食を会場の外でささっと食べて、で、男子フリー。これもすでにかなり記憶曖昧だが。六分間練習の前の選手紹介のときに羽生くんが位置を間違えていて、紹介始まってから気づいて移動していてちょっと笑い。六練の時の羽生くんをガン見していたはずなのだがなんかもう詳しいことはさっぱり思い出せない。第一滑走がレイノルズくん第二滑走がコフトゥンくんという実力者が並んだのはちょっとびっくりな展開。でもレイノルズくんは今季本格的に戻ってきてくれてよかった。このときも3A転んだり4Tに回転不足とられたりはしてるようだけれど4S決まったし四回転時代の先駆者の一人としての存在感が観られて嬉しかった。コフトゥンくんはなかなか試合で安定しないのがつらいところだなあ。李くんは本来ならばヤンくんが出るところの代役なのだろうけれどよくがんばっていた。フランス二人もなんかけなげだったな。
 そんな第一グループの最後に羽生くん登場というなんだか不思議な展開。4Lo綺麗に決めたらしくてとりあえずほっとし、でも4Sが1Sに抜けてああっとなり、最初のスピンにビールマン入らなかったから腰悪いの?とちょっと心配になり、ステップとふわふわ3F素敵だなと思い、また降りてきた何かをつかまえるような仕草でああ、と思い。4S3T綺麗に決まったらしくてよっしゃーと思い、4Tは結構目のまえで美ジャンプで嬉しくて、3A2Tも決まったらしくてよしよしと、そして次は3A1Lo3Sと漠然と思っていたら軌道が違う感じであっそうか4T1Lo3Sだ!と跳んだ後で気づき、シットスピンからコレオの流れが綺麗で、多分3Lzは3Aに化けるんだろうなと思っていたら1Aに抜けてしまってああっと。でも最後のスピンも綺麗に締めて、200点いくのかなあと思っていたらぎりぎりだけれど乗ってよかったな、と。でも私はやはりそこまでスケオタではないしぼーっとしていたから、現地では「これが史上初後半四回転3本成功」とか「史上初4T1Lo3S」とか全然気づいてなかったのであった。ホテルに帰ってネットニュースなど見て、そうか!と。
 試合直後の記事にも書いたように、私は羽生くんに深紅の薔薇を投げた。いくつか花を買って、羽生くん以外にも気に入った演技の選手に投げようかな、とも考えたけれど、私のことだから多分優柔不断に今この人に投げるべきかあとにとっておこうかとか悩みそうだな、と思い、いさぎよく(?)羽生くん一人だけに投げることにした。いろいろな種類、いろいろな色のお花が売っていて、私は薔薇が好きなので、最初は薄いピンクの薔薇にしようかな、と思って物色していたが、ふと深紅の薔薇が目に入り、羽生くんが私の投げた花を手に持った場合を想像して、いやそんなことは起こり得ないのはわかっているが、でもイメージとして、Hope & Legacyの衣装の緑と青がわりと濃い色なので、ピンクより深紅の方が色としてくっきり映えるかなと思ったのである。薔薇の色としては薄いピンクと深紅がどちらも甲乙つけがたく好きなので。で、聞いてはいたけれど会場で売っている花は投げやすいように根元の方におもりがついていて、そのおもりと反対側を持って横回転的に投げると結構飛ぶ。というか非力な私でも、スタンドの一番前からリンクまで数メートルの距離を届かせることができた。ちなみに審判席の真後ろからは投げ入れ禁止。私の席はぎりぎり投げ入れ可能エリアにアクセスできるところであった。以前から花を投げるのが憧れだったのだが、これまで試合では後ろの方の席ばっかりだったのであきらめていたのである。花を投げることで、羽生劇場のエキストラとしての役割をよりはっきりと果たせるような気がするじゃないか。自己満足だけれど。「あなたに放(ほう)った真っ赤なバラは今夜の気持ちと受け取って」てことだ。そういや「人よりたくさんいい目に遭って人よりたくさん悲しんだ」って羽生くんっぽいな。
 後半グループ、チャン氏はやっぱり滑りが心地いい。なんか「重厚な軽やかさ」みたいな不思議な感じ。あといつも思うんだけれど彼の4T3Tのクオリティの高さはなんなんだろう。ブラウンくん、私は特に今季の彼のフリー「ピアノ・レッスン」が大好きで、これを生で観られたのはとっても嬉しかった。幸福な時間であった。コリヤダくん、なんていうか個性的な、アクセントのある滑りでいいなあと思った。自己ベスト更新おめでとう。ジンくんとチェンくんは本来の出来ではなかったけれど、それなりに楽しませてもらえた。
 で、宇野くん。なんか後から入れた4Loの方がむしろ4Fよりも得意になってないか?あと後半の3A3Tはクオリティも高いけれど音楽とのタイミングもばっちりだなあとあらためて感心した。4Fの二本目転倒してコンボ券捨てたのがもったいない。でも3A1Lo3Fを後半に決められるとやっぱり強いよなあ、と。で、羽生くんとどっちが1位だろう、と私はちょっと判断がつかなかったが、結果が出てみるとわずかに200点に及ばず。あとでプロトコル見たら3Lzにエラーがついて、二本目の4Fがダウングレードになっていたのか。それにしても宇野くんの成長っぷりは本当に凄まじいなあと思う。
 で、羽生くんが応援席のお片付けをしているのを双眼鏡でちょっと眺めてみたりして、そして羽生くんが会場をはけてゆく最後に「ありがとうございましたー!」ってマイクなしで叫んでくれたのを嬉しく聞いて、会場を後にしたのだった。そういえば会場を出て行くときに、スタンド二階(だったと思う)の一角で松岡修造さんたちが試合後のコメントらしきものを撮影しているのを見かけた。

*******

 羽生くん、スケート連盟からの表彰の後で、今後について「スケートへの本能を剥き出しにして」とか云ってたらしいが、今まで本能剥き出しじゃなかったのか!と思わずツッコんだ。
 それから、JOCの合宿のときに「フィギュア以外でやるならアーチェリーか弓道」と云ったらしいが、弓道なんて想像しただけでも似合いすぎて頭がおかしくなりそうである。とりあえず格好だけでもいいから一度やってみせてくれないか。


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04.25
Tue
 エキシビションの日はわりと早めに会場入りした。自分の席の位置を確認し、アイスリンク仙台のショップに行こう、とそっちへ向かってるとリンクの方からNotte Stellataが聞こえてきた。そこで私が何を思ったかというと「ああ、本番前に音響の調整でもしているのね」。このときの自分をマジでタコ殴りしたい。
 で、アイリンショップでグッズを見ているとなんとなくリンクの方がただならぬ気配。もしや……と思って急いで買い物して(レターセットと付箋を買った)、リンクの方へ戻ってみると、羽生くんが、しかも衣装でNotte Stellataの練習をしてるじゃないか!
 そう云ってくれれば、最初からちゃんと観たのに!(誰を責めているかわからない)
 それでもまあNotte Stellataの後半と、アンコールのLet’s go crazyの練習を観られただけまだラッキーだったのかもしれない。しかしこのときの様子などの説明をネットに上げておられる方もいらっしゃるようだが、私は何か云えるほど覚えてない。自分をタコ殴りしたい思いと、羽生くんの練習観たよーという嬉しさがごちゃまぜになっていたのもあって、記憶装置が働いていないのである。Notte Stellataのジャンプが二本ともきれいに決まったのと、Let’s go crazyのズサーがいつもとちょっと違う感じだったことと、はけていくとき「へ」をやっていたことだけ漠然と覚えている。

 というか、やっぱり私は現地レポートをしっかり書けるだけの能力がない。これでもたとえば仕事で会合の記録なんかを作るのはわりと得意な方なんだが、やっぱり羽生くんを生で観るときは多分テンションが上がりすぎて記憶能力が飛ぶ。それとあまり現地に行った回数がないので現地慣れしていないのもあるかもしれない。それでもざっと、エキシビションについて全部ではないがメモ程度のものを書いてみる。ちなみに、帰ってからまだばたばたしていて、エキシビションの放送分の映像は観ていない。かなりたくさんスタオベした記憶。席は向こう正面ほぼ真ん中辺、アリーナ席のすぐ後ろ、スタンド最前列。選手が近くに来ると足下が見切れてしまう席だがリンクにわりと近いしまあ文句を云うのは贅沢というものであろう。写真はあまり鮮明でないが、壁に貼ってあったエキシビションの順番表。
IMG_4444.jpg
・日本チームのPPAP、楽しかった。しかしチーム演技とはいえどうしても私は羽生くんをガン見してしまうので、チーム全体に目を配れなくてごめんなさいという感じ。
・ペアのタラソワ/モロゾフ組、福岡でのグランプリファイナルを観に行ったときにジュニアで出ていて、よりによって名前がタラソワとモロゾフかよ!と思ったりしたのだが、その二人が今や世界の第一線ってなんか感慨深いような。
・ジンくん楽しげでよかった。
・若葉ちゃん雰囲気あってよかった。
・ブラウンくんは徹底したエンターテイナーですごく盛り上がった。
・ゲストのフェルナンデスくん、第一部と第二部二回出てきたけれど、どちらもやっぱりさすが上手いなあと思った。特に第一部の方が今回好きだった。
・そして村上佳菜子ちゃんの引退発表。引退そのものはあり得ると思っていたけれどここで発表というのはあまり考えていなかったからちょっとびっくり。感情のこもった綺麗な演技だった。これからの道に幸あれ。
・ロシアチームの演技はちゃんとチームとして観られた。
・宇野くんもやっぱりうまいなあ。
・パン/ジン組はなんかストーリーがあって面白かった。
・ワグナー姉さんもカッコいい。
・コリヤダくんも面白いプログラムだった。いい味出てた。
・舞依ちゃん可憐に。
・チャン氏は観てて滑りが本当に心地よい。
・ジェームス/シプレ組、特にリフトが凄い。シプレさんの頭の上にジェームスさんのウェストあたりを乗っけて、手で支えることもなくくるくる回れるってなんなのー。アンコールも圧巻。
・メドベージェワちゃんのセーラームーンは演出とか早着替えとか凝ってるし、さすがのオタクっぷり炸裂。しかしその衣装でアンコールのフリー後半を滑るのは違和感があって笑ってしまった。最後の電話はマモちゃんが死んだという知らせか?と。
・ウィーバー/ポジェ組、雰囲気あって素敵。
・羽生くん。Notte Stellataの最中に二、三度「ああ、今、私、Notte Stellataを生で観るという夢を叶えてるんだ……」と思った記憶が。うっとり。アンコールのLet’s go crazyはそりゃあ大変な盛り上がり。羽生くんの煽りも多かったように思う。羽生くんが投げキッスをするたびに、特にそれが飛んでいったと思われる方向から悲鳴が。最後は競技と違って高速スピンで、パリ散のように片手をつきあげるポーズで締め。
・フィナーレの時に、出場者が一列に並んで挨拶したりするが、そのとき羽生くんの位置が私の席とわりと近かった。席が向こう正面なのでこちらに背中を向けている時間もわりとあったが、なんせあの白鳥衣装なので「背中きれいだなあ」と見とれてしまった。襦袢越しだとわかってはいるのだが。
・フィナーレの最後にメドベージェワちゃんや舞依ちゃんがジャンプ大会を繰り広げてたけれど、観客から煽られても羽生くんがそれに乗らなかったのにちょっとびっくり。この日も羽生くんから最後に「ありがとうございましたー!」のマイクなし生声挨拶をいただけたけれど、その前に自分で「3、2、1」とカウントダウンしてたのはなんだったんだ。

 順番が前後してしまったが、男子フリー等の日についてもいずれまたメモ程度のものは上げたいと思っている。何にしても、久しぶりに羽生くんを生で観られてとても幸せであった。


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04.23
Sun
 国別対抗戦男子フリーについて、まだ放送された映像類を全然観返してない状態で、現地で観た印象だけで感じたことの一端をちょっとだけ書いておく。
 ジャンプの成否は置いておいて、スケートとしてのみごたえ、ということでいうと、羽生くん、チャン氏、ブラウンくんという連続して滑った三人(あいだに六練がはさまっているけど)が突出していたように感じた。
 ほとんどの選手たちは「滑りながら表現する」という印象なのである。ただ、上記三人は「滑りが表現になっている」という域に入っていると思う。今回、羽生くんはどちらかというとジャンプ優先で表現は抑えめだったかもしれないが、それでも、他の多くの選手と比べるとずっと、音楽とスケート運びが自然に融合していた。チャン氏にしてもブラウンくんにしても、スケート自体が観ていて心地よく、競技としての評価など度外視して、ずっと観ていたいような気持ちになる。
 もちろん「滑りながら表現する」段階と「滑りが表現になっている」段階の間はくっきり分かれているわけではなく、グラデーションになっていて、たとえば宇野くんなどはかなりいい線まで来ていると思うのだが、私個人の印象では、やはり上記三人が傑出していたという感じだった。おそらくそういう状態になるには、才能などだけではなく、ある程度の年齢も必要ということなのかもしれない。

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 昨日は友人に会っていたりなどいろいろ出かけていて、ホテルに戻ってテレビをつけたらちょうど女子フリー後半グループからだった。良演技続きですごかった。舞依ちゃん新葉ちゃん会心の演技でパーソナルベスト更新おめでとう。メドベージェワちゃんの世界最高更新もすごい。
 というか、シングルの比重が大きくて日本有利のルールではあるけれど、日本が優勝するとあんまり思ってなかった。ごめんなさい。おめでとうございます。

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 さて今日は午後にエキシビションを現地で。すごく楽しみだ!


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04.21
Fri
 東京のホテルにて。まだニュースなども追えてないし、ショートのことも振り返ってないし、帰って落ち着いてからまたちゃんといろいろ書こうと思うが、とりあえず。
 羽生くんよかった。前半のサルコウと最後のアクセル抜けたけれど、その一方で4T1Lo3Sなどというものまで入った後半4回転3本が観られたりして。ある意味、いろいろ起伏のあった今季を象徴するような演技だったかも。
 そして、ジャンプの成否はともかく、スケートとしての美しさは生で観るとまた格別だった。

 審判側、右寄りの前から三列目で観ていた。人生初、お花の投げ入れというのもできた。審判席などのスペースがあるから、リンクまでちょっと距離があって不安だったけれど、なんとかリンクまで届いた。羽生くんに、深紅の薔薇を。

 羽生くんが、去り際に、会場に向けて大きな声で「ありがとうございましたー!!」って叫んでくれたのを聞けたのが嬉しかった。

 あさってはまたエキシビションを現地で。楽しみだ。


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04.19
Wed
 「技術と芸術、別プログラムで=フィギュアで新方式検討-ISU」という記事が出たが、これは本当にそうする気なんだろうか。別プログラムにどういうふうに分けるのかの具体的な詳細がわからないだけに何とも云えないが、この記事を読んだだけの感覚では「つまらなくなるんじゃない?」という気がする。現在の、技術も芸術も両方を一つのプログラムで総合して判断する方が競技としての奥深さみたいなものが保たれるのではないだろうか。技術が得意な選手もいれば、芸術が得意な選手もいるし、どちらにもバランスのとれている選手もいて、でもそれぞれがそれぞれの個性や強みを活かしながら、苦手な部分もできるだけのばしながら、技術と芸術を融合させようとがんばっていて、それが一つの競技の場で評価されるからこそ面白いのではないか。だいたい技術と芸術が切り分けられるという発想に無理があると思うのだ。もし「芸術」の方で、スケート技術と直接関係ない顔の表情だの、演技的な身振りだのが評価されるというのであればなんだかな、である。いや、顔の表情だの演技的な身振りだのを全否定するわけではない。「スケートもうまい上に、スケートをこなしながらこんなにちゃんと表情作れたり身振りが出来たりするんですよ」ということで評価されるのならありだと思うが。
 とにかく、記事に「新方式案では評価をより明確にするため」とか「競技への関心を高めるため可能性を探る必要があり」とかあるのが気になる。スポーツは多くの人の関心を引いてこそお金などが集まってより盛んにすることができ、それがそのスポーツの発展につながるというのはあるだろう。そのためには評価をより明確にしてよりわかりやすく親しみやすいものにしようということなのだろうか。
 何がわかりやすくて何がわかりにくいのか、わかりやすいのが好きかどうか、というのは本当に人によって千差万別だと思う。私個人としては「わかりやすいのがいい」のは極端な話、ビジネスに関する文書や各種案内や説明書、マニュアル類くらいではないかと思っている。好みの問題だが、特に表現とか芸術とかに関することになると「わかりやすすぎるとつまらない」のだが。「素人から見ても、どういう採点されるかがものすごくわかりやすいフィギュアスケート」とか面白いか?と正直なところ思う。多分技を極めてこそわかる上手さというようなものがフィギュアスケートにはたくさんあって、そういうものが評価されないと選手の方もやる気をなくすし競技としての進展も止まるんじゃないか。今のシステムだと、基礎点以外にGOEだのPCSだのがあって、それにばらつきやゆらぎがあるということが多分わかりにくいとされていて、人によっていろいろ意見はあるかと思うが、私はそういうばらつきのある人間がジャッジしているからこその競技の醍醐味ってあるんじゃないかとも思っている。
 だからといって今のシステムを絶対変えちゃダメだとか思っているわけでもなくて、GOEの幅がいずれ変わるのはすでに決まっているのかと思うが、PCSに掛ける係数を操作するとかして、より多様な選手を評価できるような工夫を凝らしてゆくとかで何とかならないか。せめて本当に競技を技術と芸術に分けるというのなら、もう一つ「総合」というのを残してくれないか。

 ただ、この改定が本当に実行された場合に羽生くんがどうなるか、というのは心配していない。そのときまで現役を続けていない可能性の方が高そうというのもあるが、仮に続けていたとしても、技術であれ芸術であれ「スケートが上手い方が評価される」という大前提が崩れるのでない限りは、羽生くんはきっちりルールを研究して対応すると思うので。

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 東京西川のマットレスを買うと「宙に浮いてるみたいな気持ちよさ」(羽生氏談)を味わえる上に羽生くんもご愛飲のハーブティまでついてくるらしいが、財布と寝具の決定権を握っている金持ち主婦とかでない私にはどうすることもできないのである。

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 国別対抗戦がもうすぐ。私は今回、21日(男子フリーなど)と23日(エキシビション)現地入りする。久しぶりの生羽生くんである。上から読んでも生羽生、下から読んでも生羽生。最後に生羽生くんを観たのは2015年のDream on Iceだし、ショーでなくて試合となると、2014年の全日本まで遡らなくてはならない。いつでもどこでも現地に行けるという体力行動力経済力およびスケジュール的余裕のある方がうらやましい。
 前もって断っておくがこのブログでの詳細なレポート、特に羽生くんの演技についての現地の視点からの詳細レポ、というのはおそらく無理である。なぜならこれまでの経験からみて、現地での羽生くんの記憶は断片だけ残ってほぼ飛んでしまうからだ。多分見ること自体に集中しすぎて記憶が残らないのだ。羽生くんがこないだ、Hope & Legacyで集中していて演技の記憶が残らないと云っていたのと同じである(多分違う)。


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04.17
Mon
 私の好きな堺雅人さんがCREAで文章を連載している。現在発売中の号に載っている文章をものすごく乱暴にまとめるとこんな感じ。「人間の身体はしっかり閉じているわけではなく、真ん中に消化管が一本通っているし、そもそも人間の身体は食べたものから作られているわけだし、生物の本質は膜だといっている本もあって、つまり細胞を考えたらわかるように、膜があることで完全に開いて形をなくしてしまうこともないけれど、閉じてもいない。そういう、自分は自分だけれど外にも開いている“とじつつひらく演技”ができたらいいと思っている」
 この「とじつつひらく演技」というイメージで、こないだの羽生くんの世界選手権でのHope & Legacyを思い起こしたのだった。お芝居とフィギュアスケート、ジャンルは違えど、共通するものはあるはずだ。あのときの羽生くんは、無意識のうちに入れた、とてもいい集中状態にあり、自然の中に溶け込んでいく感じを味わっていたという。それは羽生くんが、音楽や、音楽によってあらわしたい世界に向けて開かれていたということだろう。しかしだからといってスケーター羽生結弦を手放して忘我の世界に入っていったというのではない。開くと同時に、その澄んだ集中で、スケートをしている自分にもしっかり意識を向けていたのだと思う。
 そしてHope & Legacyが云ってみれば自然をテーマにしているだけに、その「とじつつひらく」という生命のあり方、というものと親和性がとても高かったということもあるだろう。この曲であらわされる生命には、いわゆる生物だけではなく、風や水、石や土など非生物も含まれると広く抽象化して考えてもいいのではないかと思う。森羅万象、すべてがそれぞれとしてありつつ、しかし周りとの関係で多かれ少なかれ変化を続けている。それにはどんな例外もない。そういうあらゆる生命、エネルギーの巡りを感じさせるようなプログラム。
 芸術は虚実の皮膜にある、というような言葉もあるが、同じように、芸術は内外の皮膜にある、とも云えるだろう。Hope & Legacyは羽生くんとプログラムとのゆらめく内外の皮膜上にあらわれたみごとな芸術と呼んでもさしつかえないのではと思う。そして、そこでは羽生くんとプログラムとが皮膜によって浸透し合っただけではなく、羽生くんとプログラムによってそこに現出された世界と、観ている人とのあいだにも皮膜が生まれていた。心に羽生くんが表現した世界が浸透してくる感覚を味わった方はそれなりにたくさんいるのではないかと勝手に思っている。また、観ている人のエネルギーを羽生くんが感じていたのもおそらく間違いないところである。

 モニュメント除幕式の記念トークイベントで羽生くんが云った「曲を変えた方がいいのではと云われたら、それを覆すくらいの演技をする。見たか、これがしたかったんだぞと」という趣旨の発言は「評価されにくい」と本人も意識していたHope & Legacyで会心の演技ができたことが念頭にあったのかもしれない、と思った。

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 なんだかんだ云って、世界選手権終了後、まだ男子上位の選手のことにしか触れていなかったが、やっぱりブラウンくんの「ピアノ・レッスン」は何度観ても好きだ。そして現役最後だろうと思われるミーシャ・ジーくんの渾身のフリー。これからショーや振付などで活躍するのだろうと思う。その道に幸あれ。クワドエルフレイノルズくんの活躍も嬉しい。この三人はいずれもパーソナルベスト更新。おめでとう。
 女子は、日本の五輪枠が二つになったことは残念ではあるけれど、欠場した知子ちゃんも含めみんなが頑張った結果なのだからと思う。舞依ちゃんフリーの挽回素晴らしかった。軽やかでクリーンなジャンプが心地いい。新葉ちゃんも理華ちゃんも最後まで攻めた。それにしてもロシア勢、メドベージェワちゃんは圧倒的だったけれど、他二人が意外と伸びなくてびっくり。ソツコワちゃんの優雅な感じも、ポゴリラヤちゃんのあでやかな感じも好きなんだけどなあ。あとカナダ勢の躍進。オズモンドさんもデールマンさんもスケールが大きい感じ。オズモンドさんはやわらかさ、デールマンさんは力強さが魅力的。コストナー姉さんも素敵だった。

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 モニュメントが「?!」な銅像系じゃなくてよかった。パレードの時のTシャツを思い出す絵柄。
 トークイベントの発言で、上記に書いた「曲を変えろと云われたら」の他に特に印象的だったのは「練習時間は短いけれど集中するのが得意」という話。多分もともと体力的にそれほど恵まれていないだろう羽生くんは、時間や量で練習を積む、ということができにくいタイプなのではないかと思う。だからこそ、どういう練習が効果的、効率的かをとことん考え、コーチとも相談し、そしてやるときはぐっと集中するのだろう。
 あと、アクセルジャンプへの愛を再確認できたのもよかった。そしてシットスピンについても。どのスピンも見事だけれど、確かにシットスピンの表情のつけ方が一番すごいかもしれないなあと思う。3番目にサルコウを挙げたのは、ここでサルコウさんに好意を見せておくと、今後も機嫌良く接してくれるかもしれない、などと思っていたのだったりして。

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 さて国別対抗戦がいよいよ近づいてきた。羽生くんが真田幸村にちなんで「日の本一の力を!」と書いていたのは、堺雅人さんファンとしてはもちろんちょっとにんまりなのであった。


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04.13
Thu
 なんかもっと真面目に語りたいネタがいろいろあるような気がしてるんだが、とりあえずツイッターで「#トリプルアクセルに声をかける 」が昨日から盛り上がってるみたいなので、私はツイッターはやってないがちょっとだけ考えた。

 「自分でもわかってると思うけれど、君は羽生結弦といるときが最高にクールでエレガントだよ」

 あと、声をかけるというか質問したいこととしては
 「羽生くんから絶大な信頼を寄せられているのはジャンプ冥利に尽きますよね?」
 「Notte Stellataのときに着地をミスるのは、ひょっとして魔除けの逆柱的なもののつもりですか?」

 特に個人的に聞きたいこととしては
 「2013年の福岡ファンタジーオンアイスの楽日フィナーレで、羽生くんから4Tの後に三回連続召喚されたときは、どんな気分でしたか?」

 トリプルアクセルに限らず、羽生くんが各ジャンプに声をかけるとしたらなんて云うか聞いてみたいものである。


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04.11
Tue
 真央ちゃん。真央さん。どっちで呼ぶのがいいんだろう。この記事では真央ちゃんと呼ぼうか。これから先は真央さんになるかもしれないけれど。
 引退表明は今朝新聞で知ってびっくりした。こないだの世界選手権でコストナー選手が復帰してきたり、年齢の近いワグナー選手が一線で活躍していたりするのを見て、真央ちゃんにも励みにならないかな、円熟した真央ちゃんなりの選手としてのあり方を見せてくれないかな、などと思っていたところだったので。
 でも何にしても、いろいろ考えた末での結論であることには違いない。この結論に至るまでの道のりは、他人からはちょっと推し量ることのできないものだったと思う。

 ソチ五輪のシーズン、福岡で開催されたグランプリファイナルで、女子ショートの公式練習と試合を観た。そのときに、真央ちゃんは、滑り全体として、他の選手にはないまろやかさというかきれいさというか、なんともいえない雰囲気があるなあということをまざまざと実感した。

 ういういしく可憐な初期の真央ちゃんもいい。だが私が云うのもなんだかえらそうだが、真央ちゃんは歳を重ねるにつれて、滑りそのものがどんどんうまくなっていったと思う。なめらかさと深みが年々加わってくる感じ。それがもう試合で観られないのは残念だなあと思う。でもショーでまた魅せてくれるかな。

 本当にフィギュアスケート界にたくさんのものを残してくれた選手だと思う。トリプルアクセルなどの実績、挑戦し続ける姿勢が多くの選手のお手本や目標になったことなどはもちろん、愛される人柄が、多くの人をフィギュアスケートに引きつけ、フィギュアスケート人気を確固たるものにした。真央ちゃんに憧れてスケートを始めた世代が今どんどん育っている。真央ちゃんの遺伝子はいろいろな形でスケート界に残ってゆく。そうそう、羽生くんファンとしては、今や羽生くんの強力な武器であるトリプルアクセルがそもそも最初に跳べたきっかけは、真央ちゃんのトリプルアクセルを見て、力を入れなくても跳べるんだ、と思って跳んでみたこと、というのも印象深い。

 今まで本当にお疲れさまでした。数々のすばらしい演技をありがとうございました。これからの道が実り多く幸せなものでありますように。


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04.09
Sun
 前の記事で、羽生くんが勝つかどうかというのは私個人にとっては重要条件ではないと書いたけれど、私のファン心理の芯にあるのはなんといってもやはり「羽生くんの演技が好きだ」ということなのである。決して練習着の皺ではない。とはいえ、羽生くんの演技についてよりも、なぜか練習着の皺などの方が語りやすかったりする。羽生くんの演技について語るのは難しい。いろいろなことを言葉にするのが好きな私ではあるが、往々にして羽生くんの演技については、それについて下手に言葉にすることがはばかられるような感じがあるのである。特に今回のように素晴らしい演技だったときにはなおさら。
 とはいえ、それでもやっぱり語っておきたいなあという気持ちもあるので、もうすでに多くの方が云っておられることと重複するようなことばかりになりそうだが、書いてみることにする。
 なんといっても、流麗典雅。すべての要素がなめらかに融け合ってつながっていた。音楽に集中できたようなことを本人は云っていたし、風になったり川の中に入っていたりするような感覚だったとも云っていた。きっと音楽そのもの、そしてその音楽によってあらわしたいと本人が思っている世界に融け込むことができたのだろう。スケートの技術的にはジャンプはもちろん、要素のつなぎの足運びに至るまで難しいことをずっと続けているらしいのに、しなやかさ、たおやかさが終始途切れることはなかった。それも決して弱々しい感じではなく、ちゃんと芯があっての上でのやわらかさ。
 以前私はHope & Legacyについて「「Hope & Legacy」と「Notte Stellata」をめぐるファンタジー」という記事で「風や木や水などの力を身に帯びて舞うことで、祈り、浄めになる、そんなイメージだと私は感じた。(中略)風や木や水などの精霊と交信できるある種の巫女さんみたいなイメージ」と書いたが、今回の世界選手権ではむしろ羽生くん自身が精霊であったかのような印象を受けた。私がHope & Legacyの音楽から想像する光景は森である。鬱蒼とした暗い森ではなく、どちらかというと林に近いような、木洩れ日がかなり感じられるような森。きれいな泉やせせらぎや池などもある。そんな森の精霊であるかのように羽生くんは見えた。それは多分、音楽そして羽生くんの描く音楽の世界観と、羽生くんの演技とが芯から融け合っていたからこそなのだろう。
 これも多分多くの方が感じておられることだと思うが、特に今回、後半のジャンプに入る少し前に止まって演技するところ、何かふわりと舞い降りてきたあえかなものをたいせつにつかまえたような動作をしたところが印象的だった。ここの振付は今までもいろいろなパターンがあったけれど、今回のが今のところ私は一番好きだ。これがどんなことを意味するかは見る人によっていろいろだろうし、限定する必要もないだろう。

 羽生くんは演技後に演技内容は忘れたといった趣旨の発言もしていたし、演技後もしばらく集中しているような表情が続いていたし、いわゆるゾーンに入っていたのではないかと云われている。私もそうではないかと思う。いずれにしても、ファンにとってもかけがえのない喜びとなったこの演技について、羽生くん本人もこの演技が出来たことが最高のご褒美だと表現していた。自分がなしとげたということだけではなく、どこかから与えられたもの――そう感じられる何かがいつにも増して濃厚にあった四分半だったのだろう。

 あまりフィギュアスケート全体について詳しくはないのだが、22歳男子が風や水や木など、自然をテーマに、というアプローチをするのは比較的珍しいのではないだろうか。しかも本人が精霊と見えるほどの表現をするというのはなかなかないことなのではないかと思う。
 ある意味でプログラムのタイプとして近いのは、鈴木明子さんの「O」かな、と思った。とても好きなプログラムの一つだ。あのプログラムもたしか鳥のカワセミを中心に、自然をイメージした曲だった。五輪のプレシーズンに、王道でない抽象的な曲を持ってきた、という点でも似ている。

 羽生くんの演技が好きなのは、どんなタイプのプログラムであれ、そこに羽生くんの演技にしかない、不思議と香りたつような「何か」があるからで、その「何か」を言葉にするのは難しいし、またあえて言葉にする必要もないものかと思う。ただその「何か」を今回の世界選手権フリーでは特に濃密に感じられた、ということは云えると思う。

*******

 昨夜、L’Arc-en-Cielの25th Liveのライヴヴューイングに行ってきた(結成25周年、私がファンになってからでも20年くらいにはなる)。いろいろな意味で圧巻のライヴだったのだけれど、hydeのコスチュームにも圧倒された。何種類か着替えていたけれど、いずれもhydeだからこそ着られるんだよなあ、というもので。がんばって着こなしてます、という感じじゃなくて、普通の人は着られないだろうものがなんなく似合ってしまうのが凄いところだよな、と。
 そういう点で、方向性は全然違うけれど、hydeと羽生くんは似ているなあと思うのである。羽生くんも、他の人はちょっと着られないようなあ、というような衣装がすっと似合ってしまう。ジャンルの違いはあれど、パフォーマンスが圧倒的で、そして少なくともパフォーマンスの最中は、ちゃちな現実感だの生活感だのみじんも感じさせないところも似ている。そういう意味で、私の中でhydeと羽生くんは「浮世離れツートップ」なのである。
 それにしても、前も書いたけれど、羽生くんの出るフィギュアスケートの試合のライヴヴューイングを映画館でやってくれるといいのになあ。アイスショーでもいいけれど。


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04.05
Wed
 ここのところちょっとばたばたしてて、まだあまりじっくりと羽生くんの世界選手権の演技を観返せてなかったりするあいだに、帰国会見だの国別出場会見だののニュースが次々入ってきてめまぐるしいこと。でもやっぱりあの世界選手権フリーについてはちゃんと振り返っておきたいのだった。今日は主に勝負の観点から。
 前の前の記事に「フリーがノーミスならフェルナンデスくんのミスを待たずとも逆転可能、それができれば優勝する確率は高い」と書いたけれど本当にそのとおりになってくれてよかった。羽生くんはショート後に相当落ち込んだという。進歩している自分を実感したくてたまらない身としては、ショートの4Sのミスは本当に「なぜまたここで」という気持ちになってしまっただろうし、順位的にも不本意きわまりなかったには違いない。私もショート直後は「……」な気分であった。しかし「フリーがノーミスなら多分なんとかなるわ」ということに気づいてから、なんだか私は妙に落ち着いた。羽生くんはノーミスを目指すに決まっているし、それが達成できなければ優勝できなくてもまあしょうがない、ショートフリーともにミスがあって優勝できるほど今の男子シングル界は甘くないのだから今後に向けての発奮材料にしてくれればいい、と思ったのだった。そして仮に羽生くんがノーミスを達成して、それでも誰かに負けるようなことがあれば、その誰かが相当すばらしい演技をしたということになるので、それはそれとして素直におめでとうだし、その選手に今後は負けないように羽生くんが発奮してくれればいいだけのことだ、と思ったのだった。
 そういうふうに勝手に落ち着いた私だが、やっぱりそれでも羽生くんの演技の直前とその最中は心臓ばくばくしてた。特に4S3Tは緊張したし、3A1Lo3Sも今季あまりはまってなかったから緊張したし、そしてもちろん最後の3Lzはばりばり緊張した。その3Lzからずっと会場の歓声が高まる一方だったけれど、私も気持ちがどんどん盛り上がっていったし、演技終了後はテレビの前でしばらくガッツポーズしていた。
 さて、それでおそらくフェルナンデスくんとチャン氏には勝てただろう、と思ったけれど、若手がこわいな、と思った。といってもジンくんに関してはノーミスでも、GOEとPCSから考えて羽生くんを超すことはおそらくあるまいと思ったけれど、チェンくんが四回転6本入れてくるという話もあったし、それがノーミスでクリーンに決まった場合は、羽生くんとショートの点数差がほぼないのでどうなるかな、と。そしたらチェンくんが転倒などあって点数伸びず。靴のトラブルがあったとかいう話だがどうなんだろう。しかし本当に四回転6本挑んできた。その意気やよし。
 ジンくんはすばらしいノーミスの演技で300点クラブ入会。ただし羽生くんには及ばず。チャン氏もミスがあって羽生くんには及ばず。そして残る手強い相手が宇野くん。ジャンプの高い基礎点を持ってるし、ショートで若干のアドバンテージもある。さてどうなるかと思って見ていたら、全体としてはすばらしい演技で300点クラブ入会だったのだけれど3Lzにミスがあって羽生くんにわずか及ばず。そしてフェルナンデスくんがすばらしい出来でGOEやPCSをもし羽生くん以上に積んできたら勝てない可能性もあったけれど、後半にミスが出て及ばず。
 というわけで羽生くんの劇的な逆転優勝が決まって、本当に嬉しかった。私個人のファン心理としては羽生くんが勝つか勝たないかというのが重要条件ではないのだが、羽生くん本人が勝ちたい人だというのを知っているのでやはり勝たせたいし、もちろん重要条件でないとは云っても勝った方が嬉しいには決まっている。
 とはいえ、薄氷の勝利ではあったのだった。宇野くんの3Lzのミスがなければおそらく負けていただろう。それできっと羽生くんも、ショートフリー共にミスをしない演技をしなければという思いがさらに強くなったのではないだろうか。
 そして、ただ勝っただけではなく、フリーで世界最高点を更新したのも大きかったと思う。羽生くんにしてみれば、オーサーコーチやウィルソンコーチの意見を押し切って「4Loを入れた上で四回転4本」構成にしたのだから、それでノーミスで世界最高点を更新できなければ「何のための4Lo投入で何のための四回転4本」と云われてしまってもしょうがないのである。でもこれで「自分の限界を押し上げることが出来た」と胸を張って云えるようになって、とても嬉しいのではないだろうか。
 それから、評価されにくいというような話もあって、四大陸後には羽生くん本人すら曲の変更を考えたというHope & Legacyがジャッジに評価されたということもよかった。ほっとした。

 さて来季は誰がどういう戦略をとってくるだろうか。羽生くんはジャンプの種類を増やすのか増やさないのか。3A二本を後半に入れる構成を崩したくないとすると、もし四回転を5本に増やしたければ新たな種類を入れなければならなくなる。いろいろ試してみるとは云っていたがどうなるか。
 オーサーコーチがスケートカナダの後くらいに呆れたように「ユヅルは新しいおもちゃを手に入れた子どものように四回転に夢中になっている」とコメントしていたが、この表現は結構的を射ていると私は思っている。もちろん羽生くんとてジャンプを跳びさえすればいい、GOEやPCSはどうでもいいと思っているわけではないが、ジャンプというものが羽生くんにとってたまらなく魅力的なおもちゃであるというのもまた事実であろう。ネイサンくんやボーヤンくんやショウマくんが4Lzや4Fというおもちゃで遊んでいるのを見て「いいなーいいなー」と指をくわえて見ているというようなところもあるだろうと思う。さて新しいおもちゃを増やしてくるか、今まで入手したおもちゃでより上質な遊びを追求するか。

 試合後の会見などで、羽生くんが「高難度四回転時代の先駆けはジンくんであること」「ブラウンくんが四回転が少なくても評価される演技をしたこと」について言及したのもよかったなと思う。「これまでより高いスコアを取らなければ勝てない時代」という潮流を作り出したのは羽生くんだけれど、それまでほとんどキワモノ扱いだった4Lzを実戦で使えるものとして投入してきて高難度四回転時代の突破口を開いたのはジンくんである。そしてブラウンくんのように表現力が武器の選手もそれとして評価を受けることができるというのも、フィギュアスケートという競技にとって大事なことだと思うのだ。それぞれの選手がそれぞれの個性を発揮できるというのがいいことだと思う。
 というか、フィギュアスケートに限らず、社会や世界のあらゆる場面で、多様性の尊重というのはとても大事なことだと思う。その多様性の尊重ということが端的にフィギュアスケートという競技で見られれば素晴らしいな、と思うのである。もちろん競技であるから勝負はつくけれど、それはそれとして、いろいろなタイプの選手がいて、それぞれの個性、よさを認め合う、それは選手どうしもファンも、というのが理想だな、と。
 なんだか話がでかくなったが、羽生くんはちゃんと他の選手やフィギュアスケート界のことを見ているよね、ということにあらためて感心したということである。


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